信州伝説の旅 (松本)
牛繋ぎ石
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| 「申し上げます。殿、お急ぎの出立を」 「わかっておる」 小笠原城主は、冑を脇に置き、目の前に咲いている牡丹の花に見入っていました。 「殿、再三の御無礼でありますが、取り急ぎご準備を」 源左衛門は頭を下げ、城主の言葉を待ちました。 「源左衛門、頭をあげてこの牡丹を見てみい。清らかで美しいものじゃのう。この花を見ていると出陣の決意も鈍ってくるというもの・・・」 「殿、お願いで御座います!今は牡丹の花など悠長に眺めている場合ではありません!」 「わかった、わかった・・・いま仕度をする故、先に行って準備しておれ」 源左衛門は城主の傍を離れ、出陣の準備に走りました。 (それにしても、心うばわれるこの牡丹・・・何としても戦乱から守っておきたいものじゃ) 小笠原城主が林城へ戻り、鎧の紐を解いていると、兎川寺の住職がやって参りました。 「これはこれはお殿さま、こたびの戦、ご苦労さまでした。お疲れのところ失礼ですが、久根下殿からのご依頼がありまして」 「いえいえ、早々のご訪問、ありがたくお受けいたします。さ、どうぞこちらへ・・・」 城主は牡丹の見える庭へ招き入れ、兎川寺住職の方丈さまにお茶を懇願いたしました。 茶の間から見える牡丹の花は、わずかに降りだしてきた雨に濡れ、いっそうの美しさでありました。 「ところで城主さま、牡丹の花は今頃が見頃でしょうな」 「おおせの通り、今日明日が見頃でしょう。今日はまた雨に濡れた牡丹の色がひときわ鮮やかです。そこでのう・・・・方丈さま。この牡丹はわしの宝・・・わしの命とも思っておるしだいです・・・ 頭を下げた城主の目には、そぼ降る雨のように、光るものがありました。 「ご城主さまのお心、承知いたしました・・・ そう言って、方丈住職さまも目頭を押さえました。 それから3ヶ月が過ぎ、小笠原城主は林城を追われました。 |
小笠原牡丹
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