妙伝寺の和尚さんは、長兵衛さんの不思議なお話をじっと聞いていましたが、しばらく考えた後で
「武田音若丸についての言い伝えは、確かに、このお寺にも残っていますよ・・・」
そう言って、お寺の本堂に置いてあった古い位牌を持ってきました。
これを見た長兵衛さんは、すっかり驚いてしまいました。
「和尚さん、本当にありがとうございました。やっぱり本当だったんですね。
早速、家に帰ったら、音若丸さまの供養をしてあげたいと思います」
長兵衛さんは、和尚さんに御礼を言ってから、又野村の我が家に帰って来ました。
そうして、親類や近所の人達に来てもらって、三日三晩かかって、裏庭の夫人が指で指した場所を一丈(約3メートル)余りまで掘り下げました。
すると、不思議な事に、その底にはポッカリと大きなほら穴が見えたのです。
人々は不思議に思いながら、なおも掘り進むと、大小二振りの太刀や経机、袈裟の輪、灯明台、人間の歯などが出てきたのです。
穴はまだまだ奥まで続いています。
その奥には、夫人の言うように、二体の仏さまが眠っているのかも知れません。
長兵衛さんは、気味が悪くなって穴掘りを止めてしまいました。
その二振りの太刀には、夫人の言うように、確かに藤原大掾兼弘という銘が刻まれていました。
鞘には金の飾り物がはめ込まれている、それは立派なものでした。